ルイス・ガレー『メンタルアクティヴィティ』

ところどころが液体で濡れ、黒のペンキらしきもので汚れた板敷きの舞台。舞台奥には三基の照明が立ち、強烈な光を客席に向けて発している。客席の明かりが落ちてしばらくすると、光の向こう側から何かが飛んでくる。ベルト、ペットボトル、コンクリートブロック、ペンダント、木片、タイヤなどなど……。共通点は見えないが総称すればゴミ、あるいはがらくたと呼べるようなモノたち。はじめのうちは一つずつ散発的に、しかし徐々にスピードを上げやがては次から次へと飛んでくる。がらくたが舞台を埋め尽くすと四人のダンサーが登場し、がらくたの上を倒れ込みそうになりながら(ときに倒れ込みながら)歩く。一人ずつ、二人ずつ、三人で、そして四人で一塊となって。四人が再びバラバラになると、一人のダンサーが地面に這いつくばり、丸太を頭で押しはじめる。他のダンサーたちはそれを眺めているが、やがてそれぞれもまた、がらくたの中から一つのモノをそれぞれに選び出し、それらと対峙する。筒状のモノを立て、ペットボトルを移動させ、何か中身がぎっしりと詰まった袋を口に咥える。全ての動作は極端にゆっくりだ。ときにダンサーは自らの対峙するモノをジッと見つめ、その表情を変化させていく。

それぞれがそれぞれにいくつかのモノと対峙していくが、不意に一人のダンサーがコンクリートブロックに鎖が結びつけられたものを舞台奥から持ち出してくる。鎖を持ったダンサーはそのまま舞台の中心でぐるぐると回りはじめ、コンクリートブロックが円を描く。その周囲をゆっくりと歩くまた別のダンサー。指先に引っかけたネックレスをくるくると回している。コンクリートブロックが舞台上に立てられていた筒にあたりそれを弾き飛ばす。やがて舞台上の全てのものが静止すると暗転。しばしの間ののち再び照明が点くと、舞台上のモノたちだけが光を浴びている。

 

冒頭のモノが飛んでくる場面はよかったけどそれ以外は……(先週観た『マネリエス』も最初のうちだけよかったのであった)。「『科学とは純粋な詩であり、逆に精神のはたらきは極めて物質的なものだ』という自身の仮説を舞台上で実証する意欲作」とのことだけど、モノと身体の関わりという点では梅田哲也とかcontact Gonzoとかの方がよっぽど刺激的なのでは。

ダンサーがあぐらをかいて自分の前に立てた丸太や筒を見つめる場面なんてあまりにも安易に見える。『メンタルアクティヴィティ』ってタイトルでしかもそれを日本でやるって。禅か。