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『インターステラー』

映画

吹き荒れる砂嵐と疫病により不毛の地となりつつある地球。世界は深刻な食料危機に見舞われ、人類はゆっくりと、だが着実に滅亡への道を歩んでいた。かつてパイロット兼エンジニアだったクーパーは現在、トウモロコシを栽培している。今や食料問題は全てに優先するのだ。パイロットやエンジニアなどという職業は必要とされていない。空への欲求を抑えつつ、義父・娘・息子と暮らすクーパー。だがある日、娘であるマーフの部屋で不思議な現象が起きはじめる。ひとりでに棚から落ちる本や小物、そして部屋に吹き込んだ砂嵐が床に描いた不自然な筋。床に描かれた模様がバイナリ信号であることに気づいたクーパーはそれが示す場所を訪れる。そこで待ち受けていたのは極秘裏に建設されたNASAの基地であり、人類の新天地となる惑星を求める宇宙探索プロジェクトだった。宇宙船のパイロットとなることを要請されたクーパーは悩みながらもそれを引き受け、家族を残し宇宙へと飛び立っていく。

この映画で繰り返し描かれるのは時間の無慈悲さであり、過去は変えられないという厳然たる事実だ。いつ戻れるとも知れぬ宇宙探索への出発前、クーパーはマーフに「お前が今の父さんの年齢になるまでには帰ってくる」と約束するが、重力と移動の速度によって影響を受ける時間の流れは父と娘を決定的に隔ててしまう。水の惑星での半日にも満たぬ探索の間に、地球では20年もの時間が経過してしまっていたのだ。一方通行のムービーメッセージに映る、自分の年齢に追いついてしまったマーフ。約束は果たされなかった。物語の後半、クーパーは超人間的な存在に助けられる形で「5次元空間」に入り込み、あのときのマーフの部屋に至る。そこでクーパーが悟るのも「彼らは過去を変えさせようとしたんじゃない」ということだった。

さて、ならば私たちはどうするべきか?人類に活路を開くことになるクーパーの娘の名前がマーフという名前であることは示唆的だ。「マーフィーの法則」に引っ掛けて名前をからかわれたマーフは「どうしてこんな名前にしたのか」とクーパーに問う。それに対するクーパーの答はこうだ。「マーフィーの法則は何か悪いことが起きるってことじゃない。起き得ることは起きるってことだ。(Murphy’s law doesn’t mean something bad will happen. It means whatever can happen, will happen.)」

クーパーをNASAへと運んだメッセージが未来の自身からのメッセージだったように、土星近くに突如として出現したワームホールや「5次元空間」もまた未来の人類によるものだとクーパーは言う。「私たち」はつながっている。過去の「私」の先に現在の「私」があり、現在の「私」の先に未来の「私」がある。過去は変えられない。だが未来は未確定だ。「私」たちは現在を生きる他ない。可能性を絶やさぬために。