ルイス・ガレー『マネリエス』

薄明かりに立つ女性ダンサー。衣装は黒の上下の下着のみ(と言ってもセクシーな感じは微塵もなく、スポーティな印象)。目を凝らしてようやくダンサーの姿が幽かに見える程度に光量は絞られている。輪郭がぼやけて見えるのはダンサーが痙攣しているのかそれとも目の錯覚か。サミュエル・ベケット『わたしじゃない』の暗闇に浮遊する口を思い出した。

徐々に明るくなるにつれ、ダンサーが身体の各パーツの動作確認をしているかのような動きをしているのが見えてくる。一定のパターンが繰り返される中で(ここでは音楽も一定のビートを刻むものだった)徐々に動きは速くなっていき、やがては常人には不可能な超高速に。この一連の流れがいくつかの振付パターンで繰り返される。途中、歩く動作がかなりの割合で含まれていたこともあり、この部分ではマレーの連続写真を思い出した。高速になっていく中で、ところどころで動作不良=動きの失敗が見えるのだけれども、それもおそらくは振付に組み込まれたもので、失敗さえも機械的に実行される、極めてマシーナリーなダンスだった。

このあたりまではそれなりに面白かったものの、その後ダンサーはなぜか全裸になり、それまでとは一転、普通のダンスを踊り出す。「普通」って何かって話だけど、それまでの機械的な動作ではなく、「ああ踊ってるなあ」という感じ。ここからは正直、振付が面白いわけでもなく(前半の様々な動作をミックスすることで構成されてるっぽかった)、退屈。途中腹にネズミ(?)のマークをマジックで描いたり、なぜか再び服を着たりというイベントが挟まるものの持ち直さず。なぜ脱いだ……。

暗がりからはじまり、断片的な動きから統合された動きへって流れは去年のF/T13公募プログラムに参加してたゴーヤル・スジャータ『ダンシング・ガール』と共通してる部分があると思うのだけど、統合して「普通」になっちゃうなら解体していく方向で構成した方がまだ面白いと思うんだよなー。