KAIKA『gate #12』

劇団しようよの大原渉平ディレクターによる3団体×2プログラム、計6団体による試演会。KYOTO EXPERIMENT2014フリンジ企画オープンシアターエントリー作品。

各演目間の転換の5分でそれぞれの作・演出の話を聞くコーナーがあるのはよかった。

以下、ほとんど誉めてないので若手の試演会に対する言葉としては不適切やもしれん。

Aプログラム

ナントカ世代/京都『紙風船(作:岸田國士、演出:北島淳)

夫1人に対し6人の妻(メイン1人とその5人の分身)が登場する『紙風船』。男の不満が「大きくなる」のに対し、女の不満は「数が増える」という北島の実感に基づいた演出とのこと。夫が外出すると再び言い出すところで妻がまた1人増える。「紙風船文様」のおかげで『紙風船』は何度も見てるから評価が辛くなってるかもしれないけど、この演出は作品から引き出されたものとは思えなかったし、作品に秘められた可能性を引き出したり別の可能性を与えたりするものでもなかったような。複数の妻がギャグというか茶化しめいたことをちょこちょこするのがうるさい。主演の2人(夫・金田一央紀と妻は誰かわからん)がそれなりにうまいだけに、普通にやった方が面白いんじゃないかと思う。メイン2人の衣装は時代がかってるのに夫はiPadいじってるとかそのあたりが不統一な感じもねらいがあるようには思えない。古典やるなら取って付けたような演出じゃなくてきちんと作品に向き合った演出が見たい。

女の子には内緒/東京『いざよいエーテル』(作・演出:柳生二千翔)

パワポ芸と体の動きが完全に範宙遊泳。内容云々以前にそれは今、若手が最もやってはいけないことでは……。特にパワポ芸はやろうと思えばそれなりのものならば誰でもできるだけに。

劇団走馬灯/京都『開かずの扉』(作・演出:稲葉俊)

前説を終えた主宰がハケようとしたらハケるための扉が開かず『開かずの扉』がはじめられない、という体のメタ芝居コメディなんだけど全く笑えず。

Bプログラム

WET BLANKET/福岡『真っ逆さまデスバレーボム』(作・演出:大串到生)

全編が中学生のシモネタのような(というか好きな子のパンツを手に入れるために更衣室に忍び込むって設定からして中学生のシモネタなんだけど)コント。京都まで来てこれをやるモチベーションがわからん。俺は単に下品なだけで全く面白いと思わなかったんだけど、それなりに笑ってる人もいた。シモネタはシモネタなだけで笑う人が一定数いるからな……。

ムシラセ/東京『やみやみ』(作・演出:保坂萌)

色盲の女をモノクロ写真の被写体にすることで名声を得ようとする写真家の話(試演会用ショートver.)。物語は(悪くはなかったけど)置いといて一人複数役を切り替えつつの構成が巧い。役者も複数役にきちっと対応。特に片岡斎美(いつみと読むらしい)が巧かった。

劇団しようよ/京都『こんな気持ちになるなんて』(作・演出:大原渉平)

役者による色を付けない状態で言葉を届けたと思った(大意)という大原のめくるフリップに記された言葉と、役者たちによって演じられる芝居(食べられるハンバーグたちの会話!)によって進む作品。ハンバーグたちの会話の間、上手奥のホットプレートで大原は実際にハンバーグを捏ね、焼く(立ちこめるハンバーグ臭!)。後半、フリップには「ルーマニアで2012年に起きた日本人女性殺害事件を覚えていますか?」という問いかけが不意に現われ「どんな気持ちだったんだろう」と問いは続く。次回公演で予定されている「知ることのできない気持ちを想像すること」を主題とした作品のための試演ということだったのだけど、手法はともかく、語られる内容と主題との組み合わせはどうなんだ。演じられるのがハンバーグの気持ちだというのは置いておくとしても、「知ることのできない気持ちを想像すること」を主題とする作品でハンバーグとなる肉たちが「おいしく食べられたい」と食べられることに対してモチベーションが高いのはいくらなんでも食べる側である人間に都合よく想像しすぎなのでは……。