2012-08-01から1ヶ月間の記事一覧

伊藤計劃×円城塔『屍者の帝国』/『横浜借景』/toi『反復かつ連続』

「人間には物語が必要なのです」 ー『屍者の帝国』1.『屍者の帝国』『屍者の帝国』はそれ自体極めてフランケン的な小説である。早逝した伊藤計劃の遺したプロローグを円城塔が書き継ぐことで完成した『屍者の帝国』。物語は屍者が労働力として活用されている…

柴崎友香『ドリーマーズ』

時間は幾重にも折り重なった薄絹のようなもので、現在の向こうにふと過去が透けて見えることがある。あるいははっきりと意識していないだけで、私たちの思考は現在と過去を常に行き来しているのだと言ってもよい。柴崎友香『ドリーマーズ』は夢をモチーフと…

鈴木光『Mr.S & ドラえもん』

ドラえもんはいない。ドラえもんはいなかった。ドラえもんはいないだろう。日常の風景や人物を捉えた、無数の映像のモンタージュ。それぞれのカットはごく短く、私たち観客がそこに映し出されているものの全体を把握するかしないかのうちに次のカットに移っ…

クリストファー・ノーラン監督『ダークナイト ライジング』

善悪の境はどこにあるのか。そもそも善悪の区別はあるのか。あるとすれば何がそれを決めるのか。法か倫理か。ノーラン版バットマン三部作を貫くこのような問いはしかし、『ダークナイト ライジング』という映画のスペクタクルとサスペンスの前にともすれば…

小野不由美『残穢』

実録風ホラー小説である。「端緒」と題された冒頭、作家の「私」の下にある女性から手紙が届いたことが語られる。自宅マンションの一室で机に向かっていると背後の和室からサッサッと微かな音が聞こえるというのだ。ただそれだけのこと、だったのだが…。怪異…

舞城王太郎『SPEEDBOY!』

『煙か土か食い物』でメフィスト賞を受賞&デビューして以来自分自身とその文体をひたすらドライブしてきた舞城王太郎がまさに自らのまとうスピードそのものをモチーフとして書き上げた小説『SPEEDBOY!』は背中に鬣を持つ少年の疾走に加速していく文体/展…