演劇批評誌『紙背』再始動に寄せて

『紙背』を再始動します。
誌名の「紙背」は文庫に対応する英単語paperbackを漢字に変換したもの。戯曲とその上演に対する劇評を合わせて掲載する『紙背』は文庫サイズの演劇批評誌です。
2017年からの1年で四号まで刊行し、その後は休刊状態にあったのですが、この度、再始動することになりました。『紙背』は以下のような特徴を持つ演劇批評誌です。

戯曲と劇評をセットで掲載
戯曲も劇評も慣れていない人にはなかなか読まれづらい書き物なのですが、文庫本に解説が収録されているように、戯曲と劇評がセットで掲載されていることで、どちらも多少なりとも取っ付きやすいものになるのではないかと思い、このような構成になっています。

一本の戯曲に二本の劇評
劇評は作品の「面白さ」を引き出すものですが、その面白さ、面白がり方は一つではないはずです。『紙背』では一本の戯曲につき、それぞれ二本ずつの劇評を掲載しています。それらはときに批判的なものになることもあるかもしれません。しかし、そうしてさまざまな思考を刺激することもまた、作品を上演/観劇することの意味ではないでしょうか。

一冊に三本の戯曲
再始動した『紙背』では、各号で三人ずつ、それぞれに違ったタイプの劇作家を取り上げていく予定です。チケット代がそれなりにする演劇というジャンルでは、新たな作り手に出会うハードルもなかなか高くなりがちです。好きな作家、気になる作家の戯曲が収録されているからと手に取った『紙背』が、新たな作家との出会いの場となることを願っています。

若手・中堅中心の多様な執筆陣
『紙背』に掲載される戯曲と劇評は、若手から中堅と呼ばれる書き手によるものが中心となる予定です。戯曲も劇評もなかなか掲載できる媒体がない状況を踏まえ、若手から中堅に言葉を発する場を開くことを目指します。
また、現在の日本の劇評の多くは、すでに一定以上の評価を得た作家や、娯楽性の高い作品についてのものがほとんどですが、私としては、若手の実践や実験的・先鋭的な取り組みにこそ言葉が必要であり、そこから生まれてくる「豊かさ」があるとも思っています。若い書き手による戯曲や劇評は、ますますその速度を増す社会の変化が最も顕著に表れる場でもあるでしょう。劇評の執筆はジャンル外の書き手の方にも積極的にお願いし、さまざまな視点から思考を刺激する誌面を目指します。

 

さて、ここからは『紙背』の活動を応援してくださる方へのお願いです。
『紙背』は今後、半年に一度の刊行を予定しています(おおよそ文学フリマ東京の開催に合わせた刊行になります)。継続的な刊行のためにも、興味関心を持っていただける方は是非とも早めにご購入いただけるとありがたいです。

というのも、一定の部数が売れれば赤字にはならないように予算を組んでいるとはいえ、刊行のために必要な資金は編集部メンバーが立て替えているため、早くに資金回収をすることができればそれだけメンバーの金銭的負担が減り、活動の持続可能性が確保しやすくなるからです。
また、『紙背』既刊はいつでも入手できるようかなり多めに刷ったのですが(現在も観劇三昧などで入手可能です)、今回は次号刊行までの売り切りを目指して部数を設定しています。気づいたときには完売ということもあり得ると思いますので、その意味でもご購入はお早めに。

 

現在、送料無料で一般発売に先がけて11月上旬にお届けする先行予約を受付中。ラインナップもこちらからご覧いただけます。申し込み締め切りは10月29日(日)です。

shihai.stores.jp


一般発売は11月11日(土)開催の文学フリマ東京から。ブースは【し−64】です。
先行予約終了後も予約は随時受付けますが、11月12日(月)以降の発送となります。
11月12日(月)以降は順次、いくつかの書店や関連する劇団の公演会場などでの販売を予定しています。

『紙背』2023年11月号のラインナップについてはまた改めて。
再始動した演劇批評誌『紙背』をどうぞよろしくお願いします。

演劇批評誌『紙背』編集長 山﨑健太