2016-01-01から1年間の記事一覧

ロロ『いつだって窓際であたしたち』

戯曲と演出と俳優の能力が重なり合えば、観客の想像力を喚起して、意識の流れを誘導し、その場にいなくなった人間についての物語も、あるいは前後の時間や、舞台の外側の空間についても、容易に観客に想像させることができるのだ。すなわち、ある限られた空…

柴崎友香『春の庭』論(ペネトラ5、2014年11月)

世界は無数の時間の織りなす綾としてあり、柴崎友香の小説はその様を精緻に描き出す。わたしの、あなたの、モノの、現在の、過去の、未来の、そしてフィクションの時間。無数の時間はもつれ、より添い、重なり合い、あるいは一瞬の交錯を経て離れていく。そ…

移人称/演劇/鳥公園(In-vention第3号、2015年2月)

文芸評論家・渡部直己は「今日の「純粋小説」——『日本小説技術史』補遺」(新潮2014年10月号)を「移人称小説の群れ」と題した節からはじめている。渡部は小野正嗣『森のはずれで』(〇六年)、岡田利規『わたしたちに許された特別な時間の終わり』(〇七年…

ジエン社『30光年先のガールズエンド』劇評

ある種のテレビゲームには「強くてニューゲーム」というシステムがある。RPGなど、プレイヤーが操作するキャラクターを少しずつ強化しながら進めていくタイプのゲームに多い。一度ゲームをクリアすると、その時点でのステータスやデータを引き継いだ状態…