2015-01-01から1年間の記事一覧

フランケンシュタインの視線——鳥公園『緑子の部屋』解説(冒頭部/全文はペネトラ7掲載)

この文章は鳥公園『緑子の部屋』の解説として書かれている。ここで言う『緑子の部屋』は二〇一四年三月に鳥公園#9としてまずは大阪で、次いで東京で上演された、西尾佳織の作・演出による演劇作品である。二〇一五年十一月に書かれているこの文章は、筆者…

ドキュメンタリーと編集——村川拓也『終わり』(2015.4.ver.)

村川拓也の新作ダンス作品『終わり』を観て何よりもまず驚いたのは、それがあまりにダンス然としたダンスだったことだ。クレジットがなければコンテンポラリーダンスの振付家による作品だと思って見ただろう。しかしそれは村川の、いわゆる「振付」能力の高…

『蒲団と達磨』とサンプル

岩松了の戯曲『蒲団と達磨』には人の出入りが多い。舞台となる和室にはその主である夫婦とその家族だけでなく、彼らの友人知人、果ては赤の他人であるバスの運転手や家政婦の恋人までもが登場する。蒲団が敷かれ、寝室として使われている和室にだ。ここに岩…

SPAC『ハムレット』

登場人物を削り(ギルデンスターンもローゼンクランツも墓堀も登場しない)110分とコンパクトな宮城聰演出『ハムレット』。 韻を踏んだ、というかほぼダジャレのように連なる台詞でテンポよく進む喜劇調の前半は、それなりに楽しく見つつもあまり乗れず、し…

間瀬元朗『デモクラティア』1・2

民意、あるいは世論とはいったい何だろうか。それは個々人の意見の集積でありながら、そうであるがゆえにどの個人の意見とも完全には一致しない。だがもし民意を体現する「個人」が存在したら?それは「人間よりも人間的に正しい」「究極の“ニンゲン”」なの…

『インターステラー』

吹き荒れる砂嵐と疫病により不毛の地となりつつある地球。世界は深刻な食料危機に見舞われ、人類はゆっくりと、だが着実に滅亡への道を歩んでいた。かつてパイロット兼エンジニアだったクーパーは現在、トウモロコシを栽培している。今や食料問題は全てに優…

阿部和重 伊坂幸太郎『キャプテンサンダーボルト』

物語はあるバーからはじまる。中年男に口説かれる若い女。彼女は男から情報を引き出そうとしている。東京大空襲の夜、東北は蔵王に墜落した一機のB29。ニックネームはチェリー・ザ・ホリゾンタル・キャット。地平線の猫、チェリー。B29はなぜ東北にいたのか…